今回の相続で見えた課題を、次に持ち越さない|生前対策と不動産の出口

今回の相続が終わっても、配偶者への財産の集中や、分けにくい不動産といった課題が残ることがあります。制度を選ぶ前に、何に備えたいのかを先に決めます。

遺産分割がまとまり、名義変更も終わる。手続きとしては、そこで一区切りです。ただ、相続の相談を受けていると、終わった時点ですでに次の課題が見えていることがよくあります。

その課題を放っておくと、次の相続で同じ話をもう一度することになります。今回見えたことを、次に持ち越さない。そのための考え方を整理します。 

この記事の内容
・今回の相続が終わったときに、残りやすい課題
・制度を選ぶ前に、何に備えたいのかを決める
・遺言・生前贈与・民事信託・生命保険の分かれ目
・不動産は、遺産分割の段階から出口まで考える
・当事務所は「売る会社」ではありません
・本当に詰まるのは、制度を選ぶところではありません
・初回のご相談は無料です

今回の相続が終わったときに、残りやすい課題 

 2次相続まで見て「今回はこの分け方でいこう」と決めたとしても、将来に向けて課題が残ることがあります。よくあるのは、次のようなものです。

  • 配偶者に財産が集中した
  • 次に自宅を誰が相続するか決まっていない
  • 子ども同士で分けにくい不動産が残った
  • 将来、自宅を売却する可能性がある
  • 判断能力が低下したときの財産管理が心配
  • 特定の子や孫に財産を残したい
  • 相続人以外にも財産を渡したい 

 どれも、今すぐ困るわけではありません。だから後回しになります。ただ、次の相続が起きたときには、選べる手段がほとんど残っていない、ということが起こります。配偶者に財産を集めた場合に、次の相続がどうなるかは、別の記事にまとめています。 

とりあえず配偶者で大丈夫?|2次相続まで考えると、税金だけでは決められません  


 制度を選ぶ前に、何に備えたいのかを決める 

 相続対策というと、遺言、生前贈与、民事信託、生命保険、共有状態の解消など、いくつもの方法が出てきます。ただ、最初から「遺言を作ろう」「信託をしよう」と手段を決める必要はありません。 先に決めるのは、何に備えたいのかです。目的が決まってから、その目的に合った手段を選びます。制度から入ると、あとで税や売却の場面でずれが出ることがあります。  

下の図は、何に備えたいかと、それに合う主な手段を並べたものです。 

  • 遺言:誰に何を残すか、分け方を決めておきたい
  • 生前贈与:渡したい相手に、先に確実に渡したい
  • 民事信託:判断能力が落ちても、財産を動かせるようにしたい
  • 生命保険:納税資金や代償金の現金を、確実に用意したい(ほかの手段に添えて使います)
  • 共有状態の解消:共有の不動産を、次の相続に持ち越したくない
  • 何もしない:今は、動かなくてもよい(順番をたどったうえでの判断です)

 以下、遺言・生前贈与・民事信託の3つと、それに添える生命保険について、どういう場合に向くのか、判断の分かれ目はどこかを順に見ていきます。 


 遺言・生前贈与・民事信託・生命保険の分かれ目 

 遺言|分け方を決めておく

誰に何を相続させたいのかがはっきりしている場合は、遺言が基本になります。分け方に希望がある、相続人が多い、子どもがいない、不動産を特定の人に承継させたい、相続人以外に財産を残したい。こうした場合には、検討する意味があります。遺産分割協議をせずに手続きを進められるので、残されたご家族の負担も軽くなります。 

判断の分かれ目は、遺留分への手当てと、遺言の形式です。 

 遺言があっても、遺留分をなくすことはできません。特定の相続人に多く残す内容にするなら、遺留分への手当て(現金の準備や生命保険の活用)まで含めて考えておくと、後の負担が軽くなります。もう一つの分かれ目は、公正証書にするか、自筆証書と法務局の保管制度を使うかです。

遺言の入口|作成・執行・遺留分までを整理

生前贈与|先に渡す。ただし簡単には戻せない 

今すぐ資金が必要な子や孫に渡したい。不動産の名義を先に整理しておきたい。渡したい相手に確実に渡せることが、贈与の利点です。

判断の分かれ目は、簡単には元に戻せないことと、生前で完結しないことです。

贈与した財産は、贈与した人ともらった人の合意がない限り、元に戻せません。合意して戻した場合でも、課税関係が生じることがあり、戻すこと自体が新たな贈与(再贈与)として扱われる可能性もあります。遺言は一人で書き直せますが、贈与は簡単にはやり直しがききません。

もう一つは、贈与が生前で完結しないことです。相続が始まると、特別受益や遺留分の計算に関わってきます。贈与税の申告を済ませても、そこで終わりではありません。税の手当てと、家族の間の公平の話は、別に動きます。

贈与は、論点が多いテーマです。目的の確認、遺留分との関係、暦年か相続時精算課税か、契約書と持ち戻し免除、登記や名義変更、翌年の申告、そして相続時の扱い。順番に整えていくと進めやすくなります。 

生前贈与は、相続の流れの中で考える|目的・制度・特別受益・遺留分を整理 

贈与手続|進め方・必要書類・登記・贈与税申告まで  

民事信託|判断できるうちに備える 

判断能力が低下すると、不動産の売却も、預金の払い戻しも、贈与も、遺言を作ることもできなくなります。施設費用のために自宅を売りたくても動かせない、という事態が実際に起こります。備えられるのは、判断能力があるうちだけです。民事信託(家族信託)は、そのための方法の一つです。 

判断の分かれ目は、どの財産を、誰が、何のために管理するのかまで決まっているかどうかです。 

信託は、誰にでも必要な制度ではありません。どの財産を、誰が、何のために管理するのか。将来その財産を誰に渡すのか。そこまで決めて初めて、使う意味が見えてきます。

もう一つ、信託にしたことが、その後の税の扱いに影響することがあります。制度から入ると、あとで売却や税の場面でずれが出ます。 

自宅の認知症対策|遺言・贈与・信託・任意後見・成年後見を「比較して選ぶ」  

民事信託の契約を解約した例|空き家特例と譲渡税を見据えて、遺言による承継へ  

生命保険|現金を、渡したい人に確実に 

保険は、単独で使うというより、上の3つに添える形で効いてきます。受取人が単独で受け取れるため、遺産分割の協議を待たずに現金を確保できます。納税資金として、あるいは不動産を引き継ぐ人がほかの相続人に払う代償金の原資として使いやすい財産です。500万円×法定相続人の数の非課税枠もあります。

判断の分かれ目は、保険金と遺産全体とのバランスです。 

保険金が遺産全体に比べて極端に大きい場合には、公平の観点から調整が問題になることもあります。受取人の指定は、金額のバランスも見ながら決めておくと安心です。 

生命保険の整理と活用|非課税枠・納税資金・代償金・受取人の整理

何もしないという選択もあります

 相続対策は、必ず何かをしなければならないものではありません。家族関係や財産の内容によっては、今は何もしない、という判断が一番自然なこともあります。何もしないという結論も、順番をたどったうえで出したものであれば、立派な判断です。 


不動産は、遺産分割の段階から出口まで考える 

自宅、土地、賃貸物件などがある相続では、誰の名義にするかだけでなく、その不動産を最終的にどうするのかまで考えることが大切です。

そのまま住む、家族が利用する、賃貸する、売却する、当面そのまま保有する。選択肢はいくつもあります。

問題は、これを相続登記が終わってから考え始めると、選べる道が狭くなることです。特に売却の可能性が高い場合は、遺産分割を決める前から、売却後までの流れを見ておく必要があります。 

共有をそのまま残さない 

今回の相続で不動産を共有にした場合は、その状態を将来も続けてよいのかを一度確認しておくことをおすすめします。共有者の一人が亡くなれば、その持分についてさらに相続が発生します。相続が重なるほど共有者が増え、売るにも貸すにも、全員の足並みをそろえる必要が出てきます。共有にすること自体が悪いわけではありません。ただ、とりあえず法定相続分で共有、としたまま何十年も放置することには注意が必要です。  

不動産がある相続の遺産分割|代償分割と換価分割の違い(総論) 

「誰が相続するか」で、その後が変わる 

自宅について「いずれ子どものものになるから、最初から子どもの名義にしてしまおう」と考えることがあります。ただ、今後誰が住むのか、いつ売却するのか、売却した場合の譲渡税はどうなるのか、使える特例はないか、2次相続ではどうなるのか。これらによっては、その名義の決め方が最善とは限りません。不動産の名義は、登記手続きが簡単かどうかだけで決めないことが大切です。  

 相続登記を子名義にしたら、譲渡税が増えた|自宅売却と3,000万円特別控除の落とし穴  

売却するなら、売る前の遺産分割が重要

売却して代金を分ける場合にも、方法はいくつかあります。誰か一人が不動産を相続して代償金を支払うのか。複数人で相続するのか。売却して代金を分けることを前提に分割するのか。同じように最後はお金を分ける場合でも、法的な構成や税務上の扱いが変わります。売却することが決まっている不動産ほど、売る前の遺産分割が重要になります。 

売却前に譲渡税も確認する 

相続した不動産を売却すると、譲渡所得税が関係することがあります。原則として、相続人は被相続人の取得時期や取得費を引き継ぎます。昔取得した不動産では「いくらで買ったのか分からない」ということも珍しくありません。売買契約書、建築請負契約書、領収書など、取得したときの資料が残っている場合は、遺品整理で捨てずに保管してください。一定の要件を満たせば使える特例もあります。売却してから確認するのではなく、売却する前に税理士へ確認することが大切です。

 相続税がかからない相続ほど危ない|空き家特例で“気づかない損”が起きる理由  

不動産会社は査定額だけで選ばない

会社によって査定額に差が出ることがあります。高い査定額は魅力的に見えますが、査定額がそのまま売れる価格ではありません。査定の根拠、販売方法、地域での実績、担当者の説明、売却までの見通しも確認が要ります。相続不動産ではさらに、相続人が複数いる、売却代金を分ける、税金が関係する、境界や測量の問題がある、家財の処分が必要、空き家になっている、といった事情が重なります。


 当事務所は「売る会社」ではありません

当事務所は不動産会社ではないので、売却することを前提にご相談を進めるわけではありません。残したほうがよいのか、売却したほうがよいのか、今すぐ決めなくてもよいのか。まずは相続人の立場から方針を整理します。

売却することになった場合には、不動産会社の選び方や進め方を整理し、必要に応じて不動産会社、税理士、土地家屋調査士と連携します。不動産会社に依頼する前の段階からご相談いただけます。 

相続時・相続後の不動産サポート|方針整理と依頼先選びを中立な立場でご案内します  


本当に詰まるのは、制度を選ぶところではありません

遺言を作る、信託を組む、共有を解消する。手段そのものは、決まってしまえば進みます。実際に手が止まるのは、その前です。今やるのか、少し待つのか。家族の誰に、いつ、どのように話すのか。同じ結論にたどり着く相続でも、その順番によって話の進み方は変わります。

何を決めなければならないかは相続の道筋地図に、ほかのご家族がどう決めたかは相続の判断例にまとめています。 

相続の道筋地図|何を決めなければならないか  

相続の判断例|ほかの家族はどう決めたか  


初回のご相談は無料です

今回の相続で何が起きたのか。次に何が起きそうなのか。そこまで見て初めて、何に備えるかが決まります。手続きを終わらせるだけでなく、このご家族にとってこれからどうするのがよいのかまで整理する。それが、当事務所の考える「心を軽くする相続」です。

「何かしたほうがよさそうだが、何をすればよいか分からない」という段階でも大丈夫です。ご家族の状況、財産の内容、不動産の今後を一つずつ書き出し、何に備える必要があるのか、そのために何をするのかまで、この後の方針をお示しします。ご依頼いただくかどうかは、そのうえでお決めください。 遺言・贈与・民事信託のご相談の内容、進め方、費用は、生前・2次相続対策のページにまとめています。

生前・2次相続対策|いまの名義と、次の相続の準備  


司法書士田中康雅事務所
〒215-0004
神奈川県川崎市麻生区万福寺6丁目2-10
 新百合丘レジデンス402
新百合ヶ丘駅 徒歩5〜6分
電話:044-969-2262
受付:平日9:00〜20:00/土曜9:00〜18:00/
日祝は予約制
初回のご相談は無料です

司法書士田中康雅事務所|新百合ヶ丘・麻生区の相続相談

新百合ヶ丘・川崎市麻生区の司法書士田中康雅事務所。相続実務30年以上の司法書士が直接対応。「心を軽くする相続」をコンセプトに、相続登記・全部まとめて遺産整理から、自宅・不動産の承継、遺産分割、遺言、生前・2次相続対策まで、法・税・暮らし・想いの4視点で道筋を整理。相続税は税理士と連携。まず当事務所で整理し、必要になったときに弁護士をご紹介。NPO法人相続アドバイザー協議会専務理事。

0コメント

  • 1000 / 1000